「お坊さんに渡すお布施、30万円と言われたけど高すぎる……」
「死後の名前に興味はない。戒名(かいみょう)って断れないの?」
葬儀において、最も不透明でモヤモヤするのが「お寺とのお付き合い」です。
しかし、ここで「お客様」のつもりで強気な態度に出たり、勝手にネットで安いお坊さんを手配したりすると、後で取り返しのつかないトラブルに発展します。
最悪の場合、先祖代々のお墓に「納骨させない」と拒否されることもあります。
本記事では、菩提寺(ぼだいじ)との関係を壊さずに、お布施の額や戒名について相談するための「交渉術(大人の言い回し)」を解説します。
まずは仕組みを理解。「菩提寺(ぼだいじ)」と「檀家(だんか)」
なぜ、お寺の言うことを聞かなければならないのでしょうか。それは、お寺とお墓の関係が「大家と店子(借主)」に似ているからです。
お寺はお墓の「大家さん」である
先祖代々のお墓がお寺の境内にある場合、あなたはそのお寺の「檀家(だんか)」であり、お墓という土地を借りている状態です。
大家さん(お寺)の土地に住む以上、その土地のルール(宗派の儀式・戒名)に従うのが、契約上の義務となります。
【絶対NG】ネット僧侶の手配
「菩提寺のお布施が高いから」といって、勝手に葬儀社紹介の安いお坊さんや、ネット手配の僧侶を呼んで葬儀をしてはいけません。
これは、大家さんに無断で勝手に部屋をリフォームするようなもので、重大なルール違反です。
納骨拒否トラブルの正体
もし菩提寺を無視して他の僧侶で葬儀を行った場合、四十九日になってお墓に入れようとしても、「うちのやり方ではない葬儀をした遺骨は、うちの墓には入れられない」と納骨を拒否される可能性が非常に高いです。
こうなると、お墓を撤去して引っ越す(墓じまい・改葬)しかなくなり、かえって数百万円の出費になってしまいます。
「お布施が高い」と感じた時の相談テクニック
では、言われた金額を黙って払うしかないのでしょうか?
いいえ、伝え方次第で相談に乗ってもらえる余地はあります。
【NG】「値切る」のはマナー違反
「まけてください」「ネットでは3万円と書いてありました」「隣のお寺はもっと安いです」
これらは禁句です。
お布施はあくまで「感謝の気持ち(寄付)」という建前があるため、サービスへの対価として「値切る」姿勢を見せると、住職の心証を著しく損ねます。
【OK】「経済事情」を正直に話す
プライドを傷つけず、こちらの懐事情を察してもらうには、「払いたい気持ちはあるが、経済的に厳しい」と正直に相談するのが正解です。
以下の言い回しを参考にしてください。
【お布施の相談スクリプト】
「父の闘病生活が長く、正直なところ経済的に余裕がございません。
本来であれば相応のお布施を包むべきところですが、恥ずかしながら準備が難しく……。
失礼のない範囲で包ませていただきたいのですが、同じような状況の方は皆様どれくらい包まれていますでしょうか?」
このように「下から」相談すれば、「では、今回はこれくらいで結構です」「分割でも構いませんよ」と配慮してくれる住職も多いです。
「戒名はいらない」は通用する?
「俗名のままでいい」と考える人も増えていますが、菩提寺がある場合は要注意です。
菩提寺のお墓に入るなら「必須」
戒名は「仏弟子になった証(あかし)」です。
仏教寺院の墓地は「仏弟子たちが眠る聖域」とされているため、戒名がない(仏弟子になっていない)遺骨は埋葬できない、とするお寺がほとんどです。
菩提寺のお墓に入りたいのであれば、戒名は「パスポート」のようなものだと思ってください。
どうしても要らないなら「墓じまい」の覚悟を
「絶対に戒名料は払いたくない」という場合は、先祖代々のお墓を出ていく(離檀する)覚悟が必要です。
お寺を離れ、宗派不問の「公営霊園」や「樹木葬」、「散骨」などを選べば、戒名は必要ありません。
高額な戒名料(院号)を回避する方法
戒名は必須でも、ランクを下げることで費用を抑えることは可能です。
ランクを一番下にしてもらう
お寺によっては、最高ランクの「院号(いんごう・お布施相場100万円〜)」を勧めてくることがあります。
しかし、無理に見栄を張る必要はありません。一番一般的なランクである「信士・信女(しんじ・しんにょ)」で十分です。
断る際は、故人の性格を理由にすると角が立ちません。
「父は生前、派手なことを好まない質素な性格でしたので、一番一般的な戒名でお願いしたいのですが」と伝えれば、住職も「故人の遺志なら」と納得しやすくなります。
まとめ:喧嘩別れは損。あくまで「相談」のスタンスで
お寺と感情的に揉めて喧嘩別れをしようとすると、法外な「離檀料(りだんりょう)」を請求されるなどのトラブルに発展しかねません。
お寺付き合いのコツは、相手(住職)の顔を立てることです。「教えを請う」という姿勢を見せつつ、こちらの苦しい事情を素直に伝える。
これが、余計な出費とトラブルを防ぐための、賢い大人の交渉術です。

