「生活保護を受けていて葬儀費用を用意できない」「家族が亡くなったが、火葬するお金がない」と困っている場合、生活保護法の「葬祭扶助」を利用できる可能性があります。
ただし、生活保護受給者が亡くなれば自動的に葬儀費用が全額支給される制度ではありません。葬祭を行う人の経済状況や故人の遺留金品などを踏まえ、福祉事務所が個別に判断します。
また、「福祉葬」「生活保護葬」という言葉は一般的な呼び方で、法律上の制度名は「葬祭扶助」です。
この記事では、葬祭扶助の対象になる条件、2026年の基準額、対象費用、申請先と手続きの流れを解説します。
生活保護の葬儀で利用できる「葬祭扶助」とは
葬祭扶助は、葬祭費用を負担できない場合に必要な範囲の費用を支給する生活保護制度の一つです。
生活保護法第18条では、困窮のため最低限度の生活を維持できない人に対し、葬祭に必要な一定の費用を扶助することを定めています。
一般に「生活保護葬」「福祉葬」と呼ばれることがありますが、正式には生活保護法に基づく「葬祭扶助」です。
生活保護受給者が亡くなれば必ず利用できるわけではない
故人が生活保護を受給していたという事実だけで、葬祭扶助の利用が自動的に決まるわけではありません。
葬祭を行う人の資力や故人の遺留金品、扶養義務者の状況などによって取り扱いが異なります。
反対に、故人自身が生活保護受給者ではなかった場合でも、生活保護法第18条の要件に該当すれば葬祭扶助の対象になる可能性があります。
そのため、まずは福祉事務所へ状況を伝え、対象になるか確認してください。
葬祭扶助の対象になる条件
葬祭扶助の可否は「故人が生活保護だったか」だけではなく、葬祭を行う人や遺留金品なども含めて判断されます。
生活保護法第18条では、葬祭扶助について複数のケースを定めています。
代表的には、葬祭費用を負担する余力がない人が葬祭を行う場合のほか、被保護者が亡くなり葬祭を行う扶養義務者がいない場合などがあります。
また、故人に遺留金品がある場合は、その金品を葬祭費用に充てる取り扱いになることがあります。
| 状況 | 考え方 |
|---|---|
| 故人も葬祭を行う人も生活に困窮している | 葬祭扶助の対象になる可能性がある |
| 故人は生活保護受給者だが、遺族に葬祭費用を負担できる資力がある | 自動的に葬祭扶助が認められるわけではない |
| 故人に遺留金品がある | 葬祭費用への充当を求められる場合がある |
| 故人が生活保護受給者ではない | 条件によっては対象になる可能性があるため福祉事務所へ確認する |
最終的な適用可否は個別事情によって異なるため、「生活保護を受けているから使える」「親族がいるから使えない」と自己判断しないことが重要です。
葬祭扶助で対象になる費用
生活保護法では、検案・遺体の運搬・火葬または埋葬・納骨など、葬祭に必要なものを扶助の対象としています。
生活保護法第18条では、葬祭扶助の範囲として次の4項目を定めています。
- 検案
- 遺体の運搬
- 火葬または埋葬
- 納骨その他、葬祭のために必要なもの
具体的にどこまで認められるかは、地域や個別事情、費用の必要性によって判断されます。
そのため、「葬祭扶助なら必ず直葬しかできない」「祭壇・読経・供花はすべて一律禁止」と断定するのではなく、希望する内容がある場合は契約前に福祉事務所へ確認してください。
2026年の葬祭扶助はいくらまで?
葬祭扶助には国の基準額があり、2026年現在は地域区分と大人・小人によって上限となる基準額が異なります。
厚生労働省の生活保護基準では、2026年現在の葬祭扶助基準額は次のとおりです。
| 級地 | 大人 | 小人 |
|---|---|---|
| 1級地・2級地 | 222,000円以内 | 177,600円以内 |
| 3級地 | 194,300円以内 | 155,400円以内 |
これは「必ずこの金額が現金でもらえる」という意味ではありません。
実際に必要となる費用や地域の火葬料金などによって取り扱いが変わり、一定の場合には基準額への加算が認められることもあります。
支給額や精算方法については、担当する福祉事務所へ確認してください。
葬祭扶助を利用するときの申請先と手続き
葬祭扶助を利用したい場合は、葬儀内容や費用を確定する前に福祉事務所や担当ケースワーカーへ相談します。
葬祭扶助の利用を考えている場合は、まず自治体の福祉事務所へ連絡してください。
故人や申請者に担当ケースワーカーがいる場合は、ケースワーカーへ相談すると手続きが分かりやすくなります。
一般的な流れは次のとおりです。
- 福祉事務所またはケースワーカーへ連絡する
- 葬祭扶助を利用したいことを伝える
- 必要な申請書・確認書類について案内を受ける
- 葬儀内容や見積もりについて福祉事務所と確認する
- 決定された範囲で搬送・火葬などを進める
生活保護法施行規則では、葬祭扶助の申請書に、申請者と故人の情報、必要とする金額、該当する場合は故人の遺留金品の状況などを記載することとされています。
ただし、実際に必要となる書類は個別事情によって変わるため、自治体の案内に従ってください。
葬儀社へ依頼する前に「葬祭扶助を利用したい」と伝える
葬儀社へ連絡するときも、最初に「葬祭扶助の利用を検討しています」と伝えておくと、通常の葬儀契約と区別しやすくなります。
福祉事務所へ相談する前に、自己判断で高額な葬儀プランやオプションを契約すると、葬祭扶助の対象外となる費用が生じる可能性があります。
まず必要な搬送や安置について相談し、葬祭扶助の対象になる範囲を確認してから契約内容を決めましょう。
夜間・休日に亡くなった場合はどうする?
福祉事務所が閉まっている時間帯は、搬送など緊急に必要な対応と葬儀契約を分けて考えることが重要です。
夜間や休日に亡くなった場合、自治体によって連絡方法や対応が異なります。
まず病院や施設へ搬送の期限を確認し、自治体の代表電話や担当窓口の案内を確認してください。
葬儀社へ搬送を相談する場合は、
- 葬祭扶助を利用したいこと
- まだ福祉事務所の確認が取れていないこと
- 搬送・安置にかかる費用
- どこまでが今回の契約に含まれるか
を伝えておくとよいでしょう。
死亡直後から搬送までの手順を確認したい方は、死亡後から搬送・葬儀社決定までの最初の2時間の手順も参考にしてください。
自分で追加費用を払って葬儀を豪華にしてもいい?
自己資金による追加サービスが認められるかは、葬祭扶助の必要性判断にも関わるため、契約前の確認が必要です。
現行記事では「自分で1円でも追加すると全額自己負担になる」としていましたが、一律にそのように断定するのは適切ではありません。
一方、葬祭扶助は経済的に困窮し、必要な葬祭費用を負担できない場合に行われる制度です。
そのため、
- 供花を追加したい
- 僧侶へ読経を依頼したい
- 祭壇を追加したい
- 通夜・告別式を行いたい
といった希望がある場合は、自分で契約・支払いをする前に福祉事務所へ相談してください。
葬祭扶助が認められなかった場合の対応
葬祭扶助が対象外となった場合は、必要な葬儀内容を整理し、複数の支払い方法や低額な葬儀プランを比較します。
葬祭扶助が認められなかったからといって、必ず高額な葬儀を行わなければならないわけではありません。
通夜や告別式を行わず火葬を中心とするプランなど、費用を抑えた選択肢もあります。
ただし、表示価格だけではなく、搬送距離、安置日数、火葬料金、追加費用まで含めて確認してください。
葬祭扶助が利用できなかった場合に低額な葬儀を比較したい方は、「やさしいお葬式」の口コミ・料金・追加費用の調査記事も参考にしてください。
葬祭扶助に関するよくある質問
葬祭扶助は生活保護受給の有無だけでは判断できないため、個別の状況を福祉事務所へ伝えて確認しましょう。
故人が生活保護受給者なら葬儀は無料になりますか?
必ず自己負担0円になるわけではありません。葬祭を行う人の資力や故人の遺留金品などを踏まえて判断されます。
生活保護を受けていない人でも葬祭扶助を申請できますか?
生活保護法第18条の要件に該当する場合は対象になる可能性があります。福祉事務所へ相談してください。
葬祭扶助では直葬しかできませんか?
生活保護法は「直葬のみ」と葬儀形式を指定しているわけではありません。ただし、扶助の対象は検案、遺体の運搬、火葬・埋葬、納骨など必要な葬祭の範囲です。具体的な内容は福祉事務所へ確認してください。
葬祭扶助はいくら支給されますか?
2026年現在の基準額は、1・2級地の大人が222,000円以内、3級地の大人が194,300円以内です。ただし、実際の支給・精算額は必要な費用や地域などによって異なります。
葬儀が終わってから申請できますか?
葬儀費用を契約・支出してからでは制度の適用判断が難しくなるため、葬祭扶助を希望する場合は葬儀を進める前に福祉事務所へ相談してください。
まとめ:葬祭扶助を使いたい場合は最初に福祉事務所へ相談する
生活保護の葬儀で費用に困っている場合は、自己判断で契約せず福祉事務所へ相談してから進めましょう。
葬祭扶助は、葬祭費用を負担できない場合に必要な範囲の費用を扶助する制度です。
故人が生活保護受給者だから必ず利用できる、あるいは遺族がいるから利用できない、と一律に判断することはできません。
葬祭を行う人の経済状況、故人の遺留金品などを踏まえて福祉事務所が判断します。
費用に不安がある場合は、葬儀内容や支払いを確定する前に、担当ケースワーカーまたは福祉事務所へ相談してください。
参考情報
葬祭扶助の適用条件や基準額は制度改正の可能性があるため、厚生労働省と担当自治体の最新情報を確認してください。


